映水BLOG

2023.2.27 / コラム

「おだいりさまとおひなさま」は誰のこと?内裏雛について詳しく解説

「うれしいひなまつり」の歌にも出てくる
「♪おだいりさまとおひなさま ふたりならんですましがお」

お雛様はわかるけれどお内裏様が何なのかわからないという方もいるのではないでしょうか。

今回はそんな方のために、お内裏様、すなわち内裏雛についてお話します。

内裏とは天皇の私的区域のこと

「内裏」とは古代都城の宮城における天皇の私的区域のこと。

御所、禁裏、大内などと呼ばれることもあります。

内裏の正殿である紫宸殿は、天皇元服や立太子礼、譲国の儀、節会などの儀式が行われ、のちには即位礼の舞台となりました。

紫宸殿の南庭には東に桜、西に橘が植えられており、それぞれの近くに左近衛と右近衛が配陣したため、左近の桜、右近の橘と称されます。

雛人形の飾りに桜と橘が飾られるのは、この紫宸殿の風景をイメージしてのことです。

天皇から見て左手が東にあたり日の出の方角ということもあり、当時は上位のものが左側に位置するとされていました。

このことから今でも京都で作られたお雛様は左に男雛を配置します。

雛飾りの右大臣・左大臣の位置関係もこれに基づいています。

内裏雛は天皇皇后の姿を模したお雛様

内裏、つまり天皇が儀式を行う場所に「雛」がついた「内裏雛」とは、天皇皇后のお姿を模したお雛様ということになります。

内裏雛の男雛について

内裏雛の男雛は、言葉の意味合い通り天皇をイメージしたお雛様です。

男雛のお顔や着ている衣裳、小道具の説明をします。

  • 内裏雛の男雛の衣裳

男雛の衣裳で最も代表的なものは、「黄櫨染御袍(こうろせんのごほう)」といわれる黄櫨染色の袍です。

黄櫨染御袍は天皇が重要な儀式の際に着用する束帯装束です。

櫨(はぜ)の樹皮と蘇芳(すおう)から染め出される色で、「赤みがかった黄色」や「黄がかった茶色」とされていますが、実際には時代や着用者の年齢等によってかなり幅のある色であったと考えられています。

また、衣裳の仕立てや着付けの作法には「高倉流」「山科流」があり、これを参考に男雛は製作されています。

  • 内裏雛の男雛のお顔

現在のお雛様のお顔(頭)の原型の材料は石膏が中心となっています。

古くは、木彫(もくちょう)、桐塑(とうそ)・桐の粉などで作られていました。

髪の毛は、スガ糸とよばれる絹やレーヨンの細糸を黒く染めたものを素材として使い、丁寧に頭部に植え付けます。

生え際は小筆で一本一本、細かく手描きされています。

衣裳着人形の目は、人形用の義眼を埋め込んだものが大半ですが、特に木目込人形では、全てを手描きで仕上げるお顔が主流となっています。

完成されたお顔は大まかに分類すると、「京風」と「関東風」とに大別されます。

京風は鼻筋の通った切れ長の古典的なお顔で、関東風は目が大きめで比較的ふっくらしたお顔になります。

  • 内裏雛の男雛の小道具

内裏雛の男雛の小道具を一つずつみていきましょう。

まずは頭につける「冠(かんむり)です。

冠の上部に直立する部分は「纓(えい)」と呼ばれ、これが垂直に立つのは天皇の位を意味します。

内裏雛の垂直に立つ纓からも天皇をイメージしていることがわかります。

手に持つ持ち物は「笏(しゃく)」は一位(いちい)の木で作られます。

こちらも上位の人が持つもので、威厳の象徴といえます。

腰には「太刀(たち)」を佩きます。

その他に男雛が装着する小道具としては石帯(せきたい)につるす「魚帯(ぎょたい)」があります。

装飾品で魚の形をした符(ふ)の袋で、色は位により決まっていました。

内裏雛の女雛について

内裏雛の女雛は、平安朝の十二単(じゅうにひとえ)を身に纏う皇后になぞらえた人形といえます。

雛人形においては「お姫さま」と呼ばれています。

  • 内裏雛の女雛の衣裳

女雛の衣裳は十二単と呼ばれる装束です。

十二単は平安時代後期に成立した公家女子の正装とされています。

「袴・単・五衣・打衣・表着・唐衣・裳」から構成されています。

まず下着として「小袖(こそで)」を着用し、その上に赤色系の「長袴(ながばかま)」を穿き、小袖の上に「単(ひとえ)」と呼ばれる薄手の着物を着用します。

単の上に「袿(うちぎ)」と呼ばれる複数の衣を重ねることが基本で、その色の組み合わせ、あるいは袷の衣服の表地と裏地の色の組み合わせを「かさね」(襲・重)と呼びます。

かさねは袖口・裾などに衣がすこしずつ覗き、十二単の着こなしの工夫が多くなされたところでもあります。

平安時代は袿の枚数に定めがありませんでしたが、室町時代には5枚となり、それ以後「五衣(いつつぎぬ)」と呼ばれ女房装束に定着されるようになりました。

このようなかさねの取り合わせを「重ね・襲ねの色目」といいますが、色目については主に季節感を取り入れた組み合わせになっていて春夏秋冬・または植物や色単体のグラデーションにより非常に多くの種類があり、着用の季節や行事が厳密に定められていました。

このかさねがお雛様の襟や袖口に美しく表現されています。

袿の上には「表着(うわぎ)」を着装します。

表着は打掛に相当する衣裳なので豪華な織物で作られます。

そしてこの上に「唐衣(からぎぬ)」とよばれる正装時の着物を着用します。

背後の腰部に「裳(も)」をつけ、着装完了となります。

  • 内裏雛の女雛のお顔

女雛も男雛と同じく大別すると「京風」と「関東風」とに分かれます。

関東風は、目が大きいかわいい系、京風は切れ長の古風な美人系です。

お雛様の髪型は、現在の皇室行事・慶事でも見られる「大垂髪(おおすべらかし)」とよばれるもので、これは江戸時代になってからの皇族や公家の正装の際の髪型です。

またお雛様の歯は黒く塗られているものが多く、これは「お歯黒」と呼ばれる既婚者と独身者を区別する意味があります。

現在のお雛様の材料は、一般的に石膏頭です。

肌のおしろいは、胡粉(貝殻を粉状にしたもの)でお化粧し、髪付けをし、眉・紅差しの筆仕事で仕上げます。

  • 内裏雛の女雛の小道具

女雛の小道具は、「檜扇(ひおうぎ)」とよばれる檜もしくは杉の薄板で作った扇です。

有職故実にのっとった松や鶴などの絵が描かれています。

当時は宮中での行事の作法などが記載されたメモなどを貼りつけていたようです。

また、上流階級の女性はみだりにお顔をさらすのを避けるため、顔を隠す役割もあったようです。

まとめ

今回は雛祭りの歌でお馴染みのお内裏様、内裏雛についてお話しました。

内裏とは天皇の私的区域のことですので、歌にあるようにお雛様の男雛をお内裏様と呼ぶのは正しくありません。

正しくは内裏雛の男雛と女雛、もしくはお殿様とお姫様のふたりというのが正解です。

とはいえ歌の歌詞で覚えている人も多いと思いますので、本来の意味を知ると他にも新たな発見があって面白いですよ。

ぜひお雛様を飾りながら、これは何だろう?と小さな疑問から調べてみると学びにもなっていいですね。

当工房では、江戸時代から続く伝統技術で雛人形を作成しています。

雛人形は、大切なお子様の健やかな成長と幸せを願い、お守りとなる日本の伝統文化です。

お気に入りの雛人形を飾り、お子様の誕生を家族で毎年お祝いしていきましょう。

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