雛人形のお顔の素材は?頭師が解説
女の子の健やかな成長を願って飾るひな人形。
雛人形のお顔は何からつくられているのか知っていますか?
こちらでは、雛人形のお顔の素材と衣裳の作りの違いを
伝統工芸で雛人形のお顔を作る職人が説明をしています。
雛人形のお顔の素材
雛人形のお顔の素材には、木や桐の木の粉、石膏(せっこう)、陶器(とうき)、プラスチックなどがあります。
雛人形のお顔は、江戸時代の頃は「木」などをベースとして制作されていました。江戸時代の中期頃から昭和の中期頃までは桐の木の粉としょうふ糊を混ぜた「桐塑(とうそ)」をベースとしたお顔が多く作られました。そして、昭和の中期頃からは石膏をベースとしたお顔が作られるようになりました。
木をベースとしたお顔を 「木彫頭(もくちょうがしら)」
桐塑をベースとしたお顔を「桐塑頭(とうそがしら)」
石膏をベースとしたお顔を「石膏頭(せっこうがしら)」と呼んでいます。
ただ実際には、雛人形のお顔のほとんどは石膏から作られる「石膏頭」がほとんどを占めており、伝統の桐塑頭をつくる職人も日本で数人となっております。
残念なことに、木彫頭はもうほとんど制作されておりません。
「本頭(ほんがしら)」は「石膏頭」と同じものです。
※しょうふ糊・・・小麦粉から抽出されたデンプン糊
※桐塑・・・桐の木の粉と糊を混ぜたもの
- ・桐塑頭 伝統のお顔
桐の木の粉です。
伝統の桐塑頭(とうそがしら)は桐の木の粉から作られています。
桐の木の粉としょうふ糊を混ぜて木のねんどを作ります。
桐塑頭の土台
型に木のねんどを詰め、生地抜きをして乾燥をさせたものが土台となっています。
職人が目、鼻、口などを彫刻し、伝統工芸で一つ一つ制作しています。
地塗り、中塗り、上塗りとそれぞれ何度も胡粉を塗り重ねて仕上げられます。
- ・石膏頭 現代のお顔
石膏
現代の石膏頭(せっこうがしら)は石膏から作られています。
石膏と水を混ぜ合わせ、シリコンの型に流し込んで型抜きをします。
石膏頭の土台
シリコンの型の通りにできあがったものが土台となっています。
胡粉などを塗り重ねて仕上げられています。
雛人形の作りによって異なる材料や作り方
雛人形の作りには、大きく分けて「衣裳着人形」と「木目込人形」の2種類があります。
それぞれの人形には用いられる材料や作り方も異なります。
お人形自体の見た目などにも特徴がありますのでこちらで紹介します。
- ・衣裳着人形(いしょうぎにんぎょう)
衣裳着人形 伝統工芸士 味岡映水作 桐塑頭
衣裳着人形の胴は、木でつくる木胴(もくどう)や藁を巻いてつくる藁胴(わらどう)に衣裳を直接着せ付けて作ります。
手の素材には、木でできた木手(もくて)や樹脂を使用したものもあります。
通常は、お顔と衣裳、手は別々の職人が製作しており、それぞれの工房で組み合わせられ、一つの作品になります。
衣裳着人形は、布地が立体的に表現されるため、見た目の豪華さも特徴の一つとなっております。
雛人形と言えばこちらの衣裳着人形を指すことが一般的です。
- ・木目込人形(きめこみにんぎょう)
木目込人形 伝統工芸士 味岡映水作
木目込み人形の胴は、桐の木の粉と正麩糊(しょうふのり)を混ぜて練り、粘土状にした「桐塑(とうそ)」や樹脂等を土台として作られています。
そして、形作られた土台に布を押し込んでいくための細い溝を筋彫りし、衣裳となる布地を表面にぴったりと合わせて糊とヘラを使用して溝に押し込む(木目込む)ようにして仕上げられています。
お顔は、子どもや赤ちゃんの表情も多く、目は、筆と墨で描かれている作品もあり、丸っこくコンパクトでかわいらしさも特徴となっています。
横幅が50センチ以下の雛飾りも多く、飾る場所や収納スペースが限られている方にもおすすめのひな人形です。
- ・まとめ
雛人形のお顔の材質は、桐材や石膏、陶器やプラスチックなどがある。
雛人形のつくりには、大きく分けて「衣裳着人形」と「木目込人形」がある。
現在の日本の雛人形のお顔のほとんどは「石膏」をベースとして海外でも多く作られています。
桐の木の粉を使用した伝統の「桐塑頭」は現代の「石膏頭」よりも時間も手間もかかるため高級なお顔です。
ただ、雛人形は、お顔だけではなく、衣装や台、屏風やお道具などすべてで価格が決まるものです。
色々なお顔を見比べて、素敵な雛人形を探してみてくださいね。
雛人形のお顔の作りを比較!伝統の桐塑頭と現代の石膏頭を職人が解説
江戸時代には当たり前にあった桐塑胡粉仕上げの技術を伝える職人は、今では日本で数人になってしまいました。桐塑胡粉仕上げでしか表現できない温もりや質感、美しさを大切にし、人形を制作しています。工房での一日一日のほんの少しずつの積み重ねがいつか形になり、後世に伝えていけるような作品が出来たらいいなと思っています。
- 投稿日時:2020.6.24 13.00.33 / カテゴリー:コラム
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