雛人形は親や姉妹のお下がりで飾ってもいいの?
お子様の健やかな成長と幸せを願い飾られる雛人形の元となったものは、平安時代からの歴史があり、江戸時代には女の子の初節句を祝う習慣となり現代まで伝えられています。
かわいい女の子の赤ちゃんが生まれ、雛人形の話になり、そういえば実家に自分の雛人形があったなあ。しばらく飾ってないけど、その雛人形でお祝いをすればいいかな。とお考えの方や、二人目の子供には雛人形はどうすればいいのかな。と疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。
こちらでは、雛人形を親や姉妹のおさがりで飾っても良いのかということと、そもそも雛人形はなぜ飾られるようになったのかということも歴史と合わせて説明をしています。
そして、かわいい雛人形やコンパクトな雛人形、オーダーメイドの雛人形なども紹介しています。
雛人形はお下がりでもいいの?
結論から言いますと、雛人形をおさがりで飾ることはあまり望ましいこととは言えないとなっています。
それは雛人形は平安時代に行われていた神事や赤ちゃんが健康で無事に育つようにと願いを込めたお人形に由来しているからだと言われています。
雛人形の元となったお人形は、身に降りかかる災厄を除き去る為の身代わりとして水に流されたり、枕元に置かれていました。お雛様には本来、災いから自身を守る「おまもり」の意味があります。
- ・姉妹の場合はどうするの?
妹が生まれたら姉の雛人形をお下がりとして飾ってはいけないのでしょうか。
ひな人形は、女の子が健やかに幸せに育つよう願いを込めて飾り、厄を受け持ってくれる一人一人のお守りとしての意味があります。
本来の意味を気になさらなければお下がりでも問題はありませんが、もう一つ新しいお人形を用意することが望ましいとされています。
雛人形は、必ず決まったスタイルで飾らなければいけないということはありませんので、
お人形のみでお姉さんの雛飾りの横にシンプルに飾るなど、いろいろとアレンジして楽しみながらお祝いをする方法もあります。
- ・親から子へ受け継ぐお下がりの場合
それでは、親の雛人形は娘に受け継いでも良いのでしょうか。
親のひな人形は、自身が無事に育ったことにより、その役目を果たしたこととなります。
そのため、新しい雛人形を購入することが望ましいと言われています。
- ・ふたりめの娘にも新たな雛人形は必要?
ふたりめの娘が生まれた場合には、もう一つ新しい雛人形をお姉さんと妹の一人ずつに飾ることが一番良いとは思いますが、現実的にはなかなか難しいという場合には、市松人形や浮世人形、つるし飾りもおすすめです。
また、コンパクトサイズの小さな雛人形もたくさんの種類がありますので、もしよろしければご検討くださいませ。
- ・ふたりめに購入する雛人形の大きさや金額
できれば二人目のお子様にも同じくらいの大きさや金額の雛人形を購入することが理想的です。
しかしながら、実際には飾るスペースや予算の都合で難しい場合もあります。
そのような場合は、姉と妹で比較をしないように全く異なるタイプのお人形を購入するという方法もあります。
例えば、姉には大人のお顔の雛人形を購入した場合には、妹には、かわいいこどもらしいお顔の雛人形を購入したり、段飾りを購入した場合は、お姫様とお殿様の二人で飾るタイプの親王飾り(しんのうかざり)を購入するなど、おもむきを変えて選んでみてはいかがでしょうか。
- ・ふたりめには市松人形や浮世人形、つるし飾りを用意する
雛人形を置くスペースがない場合は、お姉さんの雛人形の横に一緒に飾ることができる市松人形や浮世人形、つるし飾りなどもあります。
市松人形は、着せ替えやおすわりもできるタイプもあり、お顔も可愛らしく、着物は布地から選べる場合もあります。
浮世人形は、子供らしさを表現した創作的なお人形です。
つるし飾りは、布で作られた鶴やうさぎ、亀、海老などの縁起の良い細工物をつなげてつるしたもので、雛人形と一緒に飾ることができるほか、お部屋のインテリアとしても使うこともできます。
雛人形の意味や歴史
雛人形の歴史は深く、平安時代にまでさかのぼります。3月3日の上巳の節句に使用された、紙や草でできた小さなお人形に息を吹きかけることで身に降りかかる災厄を移し、海や川に流すという祓いのひとがたの神事に使用されたことに由来していると言われています。
そして、生まれた赤ちゃんの枕元に置く「天児(あまがつ)」や「這子(ほうこ)」といった身代わり人形もあり、この時代には、上流階級の女の子の間で、簡素な人形で遊ぶ「ひいなあそび」というおままごとも流行していました。このひいな遊びは、子供たちが、ひとがた流しの神事をまねて遊んだことが始まりだとも考えられています。
雛祭りは、この「祓いのひとがた」と「ひいなあそび」が合わさったことにより誕生したと言われています。
平安時代に海や川に流されていた小さな人形(ひとがた)は長い時間を掛け、室町時代には雛人形として立ち姿の「立雛」が誕生したとされ、さらに江戸時代には専門の職人により作られるようになり、いろいろな雛人形が誕生しました。
現在では、七段飾りにまで大きな雛人形となっていますが、1700年ごろの雛飾りは、床の間や畳の上などの平らな場所にお姫様とお殿様の立雛や座り雛を2体ほど飾っており、大きな菱餅(ひしもち)なども当時からお供え物としていました。雛人形だけでなく、現在飾られているお道具にも当時からの歴史があります。
江戸時代には、ひな祭りには雛人形を飾り、女性が酒食を楽しみ、将来の幸せと健康を願う年中行事として定着しておりましたが、まだ今日のように初節句を祝うものではありませんでした。
江戸の中期頃となると女の子の初節句を祝う行事となり、さらにはお嫁入り道具にもなり、嫁入り後の初節句に雛祭りとしてお祝いをする習慣も生まれたとされています。
そして、雛人形や雛道具なども商品化され、雛市も盛んになり技術も発達し、雛段も2段から3段、4段から5段、そして7段飾りまで飾られるようになりました。お人形は官女も作られるようになり、1780年ごろには、五人囃子も誕生しますます雛人形は豪華になりました。
明治時代には、百貨店でも雛人形を扱うようになり、昭和時代にも技術は追究され、平成、令和となった現在でも新しい雛人形は誕生し、お子様の健やかな成長と幸せを願い大切にされています。
雛人形の役目
お雛様には、我が子を病気やけがなどから守ってくださいね。という願いが込められており、一人一人のお守りの意味があります。
赤ちゃんが生まれた時に新しい雛人形を購入し、健康で幸せに育ってねと家族の願いを込めて飾るため、一人前の女性に成長することにより、願いは満願となり、雛人形は一応の役目を終えるとされています。
お役目を終えたお人形は人形供養というかたちで「ありがとう」の気持ちを込めてお焚き上げをし、お別れをするという方法もあります。ただ、雛人形を何歳まで飾るのか、ということは決められているわけではなく、一生飾っていただいても問題はありません。お母さんの雛人形の隣にお子様の雛人形を一緒に飾るということも素敵だと思います。
- ・役目を終えた雛人形は感謝を込めて供養(処分)
お守りとして見守ってくれていた愛着のある雛人形を処分するのは気が引ける方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、無事お守りとしての役目を果たしてくれた雛人形は処分してしまって問題ありません。
「人形を捨てるのは怖い」などと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、雛人形を処分しても呪いや祟りといったものは存在しませんのでご安心ください。
処分の仕方として気持ちがいいのはお寺や寺院に持ち込んで「供養」することですが、必ずしもそうしなければいけないわけではなく、供養代行サービスを使ったり、一般ゴミとしてご自身で処分されても構いません。
もしご自身でゴミとして処分することに抵抗があるようなら、捨てる前にお清めの塩をかけたり、感謝の気持ちを込めて手を合わせたりしてお別れしましょう。
- ・インテリアとして飾るならお下がりは気にしなければOK
雛人形に愛着がありどうしても捨てたくないという場合、お守りとしての役目を終えた雛人形をインテリアとして飾るのは構いません。
雛人形はお守りとしての意味合いが強いですが、伝統工芸品でもあります。
本来の役目を終えた雛人形を工芸品として飾って楽しむのもよいでしょう。
スペースを取るため全てを残しておくことが難しいという場合は、お殿様・お姫様だけを残すような形も一つの方法です。
- ・お下がりにする場合は厄払いをしてから
色々と考えたうえで最終的な結論としてお下がりにすることを決めたのであればそれはそれで一つの選択ですが、その場合は厄払いをおすすめします。
先ほども述べたように、伝統的な考え方では、雛人形は元々守っていた人の厄を代わりに引き受けてくれているので、役目を終えた人形にはその厄が残っている状態になります。
そのような状態でお下がりにするのは、気持ち的に不安が残ることと思います。
万が一何かあった際に「雛人形をお下がりにしたからかも」などと思わなくて済むよう、お下がりにする前に神社やお寺で厄払いをしてもらうことをおすすめします。
お下がりの雛人形を飾る際の注意点
お下がりの雛人形を飾る際には、以下の点に注意してください。
- 購入するより修理代が高くなることも
お下がりの雛人形は、長期間保管されていることが多く、予想以上に傷んでいることがあります。
修理が必要な場合、修理代が新品の購入費用を上回ることもあります。
特に人形そのものが破損している場合は、数万円の修理費用がかかることもあります。
- 中古の雛人形を譲り受ける場合
中古の雛人形を譲り受ける際には、状態をよく確認しましょう。
壊れたり欠けたりしている部分がないか、または修理が必要な箇所がないかをチェックすることが重要です。
また、譲り受けた雛人形に対して不安がある場合は、神社でお祓いをしてもらうことも考慮すると良いでしょう。
- 金銭的に購入が難しい場合
雛人形の購入が金銭的に難しい場合は、お下がりの雛人形を活用することも一つの方法です。
古いものを大切にする精神を伝えることができます。
また、スペースや予算に応じて、コンパクトな雛人形やキャラクターものの雛人形を選ぶことも検討してみてください。
どんな雛人形が人気があるの?
昭和の時代には、大きな七段飾りなどの豪華な雛人形を飾る場合が多く、平成の初めの頃も三段飾りなどの大きな雛人形も人気がありました。もちろん、七段飾りや三段飾りの雛人形も現代でも飾られる素敵な雛人形です。
近年では住宅事情などにより、なかなかスペースがないという方も多く、お姫様とお殿様の二人を飾る親王飾りや、三人官女がセットとなったコンパクトで収納ができる五人飾りも人気があります。
雛人形も大人のお顔も人気がありますが、小さくかわいい子供のお顔も人気が出てきています。
コンパクトな雛人形など
- ・木目込み雛人形 親王飾り
映水作
横幅 約46センチ
奥行き 約25センチ
高さ 約22センチ
まるくかわいいお顔のコンパクトな雛人形です。
衣装のつくりは木目込み人形、布には上質なシルクを使用しています。
場所を選ばずお飾りいただけます。
- ・雛人形 五人飾り 収納セット
映水作
雛人形のお顔は、江戸時代からの伝統工芸により作られています。
かわいい三人官女も一緒になりました。
衣装着の雛人形となっており、かわいい飾り箱にお人形、お道具もすべて収納ができる便利なセットとなっております。
横幅 約45.5センチ
奥行 約43.5センチ(収納箱を開いた状態のサイズ)
高さ 約49センチ(収納箱を開いた状態のサイズ)
- ・木目込み雛人形 立雛 豆飾り
映水作
手のひらサイズのかわいい立雛もあります。
小さくても職人の手づくりで、衣装にはシルクの有松絞りの布を使用しています。
二人目のお子様にもおすすめの雛人形となっており、コンパクトで楽しみながらお飾りいただけます。
- ・かわいいお顔のおぼこ雛人形
コンパクトサイズの雛飾りに合わせて、かわいいお顔のひな人形も人気があります。
子供のお顔をした「おぼこ雛人形」は、お気に入りのお顔と衣装を合わせてお選びいただけます。
職人が制作した世界に一つの雛人形です。
味岡映水作 雛人形 伝統工芸のお顔
ガラスの目がキラキラしたかわいい雛人形です。
貝殻の粉を膠(にかわ)で溶いた胡粉を10数回塗り重ねて仕上げられる江戸時代からの伝統の技法で作られています。
膠・・・動物のせき髄などから取れるゼラチン
味岡映水作 雛人形 伝統工芸のお顔 髪形は「おすべらかし」
かわいいお顔に伝統の髪形をしたお人形もあります。
お客様のお好みの髪形で制作することもできます。
- ・手のひらサイズの市松人形
味岡映水作 伝統工芸 12センチ 市松人形
雛人形本来の役目で考えると、一人一飾りが理想的ですが、姉妹の雛人形など二セットも並べるスペースがないという場合は、手のひらサイズの市松人形も、お守りの意味があり飾られる伝統のお人形です。
お顔だけでなく、手足もきちんとした作りの小さなお人形は、職人が一つ一つ制作しています。
コンパクトな雛人形と一緒に飾ったり、着せ替えをして楽しむことができます。
お好きな着物もお選びいただけます。
- ・オーダーメイド 「わくわく赤ちゃん雛人形」
職人がお姫様のお顔をお子様に似せて制作するオーダーメイドの雛人形もあります。
衣装のつくりも「衣装着人形」と「木目込み人形」の2種類からお選びいただけます。衣装のデザインも、布から選ぶことができます。
お人形の大きさはコンパクトサイズから、大きなものまで取り揃えており、お姫様とお殿様の二人を飾る親王飾りから七段飾りまであります。
台や屏風の大きさも飾るスペースに合わせ、ご提案いたします。
お子様だけの世界に一つのひな人形です。
オーダーメイド似顔雛人形のことを詳しく知りたい方は「味岡人形 オーダーメイド雛人形」をご覧ください。
- ・オーダーメイド 「わくわく赤ちゃん市松人形」
かわいい市松人形のお顔もお子様に似せて制作いたします。
大きさも手のひらサイズのものから大きなお人形まで色々なサイズの中からお選びいただけます。
着物のデザインも色々なシルクの生地からお選びいただけます。
着せ替えはもちろん、お座りや抱っこもできる昔ながらのお人形です。
オーダーメイド似顔市松人形のことを詳しく知りたい方は「味岡人形 オーダーメイド市松人形」をご覧ください。
まとめ
雛人形の元となったお人形は一人一人のお守りとして平安時代からの歴史があり、江戸時代の中期頃には、初節句として女の子の誕生を祝い、健康と幸せを願う行事となりました。
雛人形の本来の意味としては、赤ちゃんが生まれた際に新しい雛人形を買い、健やかな成長を願う為の一人一人のお守りとなっておりますが、飾るスペースなどを考えてなかなか難しい場合や欲しいと思う雛人形が見つからない場合もあるかもしれません。
私は、雛人形のお顔をつくる職人として、伝統工芸を大切にし、お客様にお喜びいただけるお人形を制作することが何よりも大切だと思っております。
雛人形のお顔の作りを比較!伝統の桐塑頭と現代の石膏頭を職人が解説
江戸時代には当たり前にあった桐塑胡粉仕上げの技術を伝える職人は、今では日本で数人になってしまいました。桐塑胡粉仕上げでしか表現できない温もりや質感、美しさを大切にし、人形を制作しています。工房での一日一日のほんの少しずつの積み重ねがいつか形になり、後世に伝えていけるような作品が出来たらいいなと思っています。
- 投稿日時:2024.7.26 08.57.52 / カテゴリー:コラム
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