雛人形の「仕丁」って誰?仕丁の役割や並べ方を解説
雛雛人形の中には「仕丁(しちょう)」と呼ばれる3人のお人形が存在しますが、仕丁がどのようなお人形であるのかをご存知の方は少ないと思います。
実は雛人形の中でも最も庶民的な存在であり、よく見ると3人それぞれの表情が微妙に異なります。
今回は、雛人形に登場する「仕丁」に焦点を当てて、役割や表情の意味などを詳しく解説します。
雛人形の仕丁の役割
仕丁(しちょう・じちょう)とは、平安時代以降に貴族などのお世話をしていた人のことです。
それぞれの表情を見てみると、怒ったり、泣いたり、笑ったりしています。
これは仕丁という立場を表しています。
仕丁は、いわば「宮廷における雑用係」として、お内裏様のお供や庭の掃除などを担当していたといわれています。
とはいえ仕丁は正式な職業というわけではなく、君主が必要に応じて無報酬で住民を働かせる「徭役(ようえき)」の一種でした。
50戸につき2人が選ばれるシステムで、3年交代制で仕えることが多かったようです。
食糧などの生活費は故郷がまかなっていたので、かなりの負担となっていました。
仕丁の表情は、さまざまな事情で宮中へ来ることになったことを表現しており、怒ったり泣いたりするほど辛い立場ではありますが、喜びもあることがわかります。
つまり、仕丁は雛人形のなかで唯一の庶民であり、同じくお内裏様に仕える「三人官女」や「随身」と一緒に並べられているものの、身分が大きく異なる存在なのでした。
仕丁の表情の意味
雛人形における仕丁は3人であるケースが一般的で、それぞれが泣いたり、笑ったり、怒ったりと異なる表情をしています。
そこにはさまざまな事情で宮中に仕えている庶民であるからこその表情豊かな姿が表現されており、その3人の姿が「三人上戸」ともいわれています。
そのように豊かな表情の仕丁を取り入れた雛人形には、親しみやすさを感じさせる役割があります。
また、雛人形の仕丁の表情が豊かなのは、表情豊かな子に育ちますようにという願いも込められているようです。
仕丁の持ち物
雛人形において仕丁が持つお道具は、雛人形の種類によって異なるものの、「台笠(だいがさ)・沓台(くつだい)・立傘(たてがさ)」といった外出用具を持たせていることが多いです。
関西では「ほうき・ちりとり・熊手」などの掃除用具を持たせていることが多く、仕丁の持ち物に関しては地域によっても違いがある印象です。
それぞれのお道具の特徴を紹介します。
- 台笠(だいがさ)
右(向かって左)に並べる怒っている仕丁は、台笠を持っています。
台笠は日傘のことです。
柄が内側にくるように持たせます。
- 沓台(くつだい)
真ん中の泣いている仕丁は、沓台を持っています。
沓台は靴を置く台の事です。
手の間にはさむように持たせます。
- 立傘(たちがさ)
左(向かって右)に並べる笑っている仕丁は、立傘を持っています。
立傘は雨傘のことです。
柄が内側にくるように持たせます。
仕丁の並べ方
雛人形における仕丁は、向かって左から「怒っている人形→泣いている人形→笑っている人形」の順に並べるケースが一般的ですが、なかには怒りと笑いが反対になっている場合もあります。
仕丁の雛人形は五段飾り以上の雛飾りでセットになっていることが多いですが、必ずしも五段目に位置するわけではありません。
近年はコンパクトな雛人形が好まれる傾向があり、四段目に随身・仕丁を飾るものや、親王と同じ一段目に官女を置くことで随身・仕丁を三段目に飾るものも存在します。
このように仕丁を飾る位置は雛飾りによって異なりますが、仕丁は雛人形のなかで一番身分の低い役職にあたることから「雛人形のなかでは一番下の位置に配置する」と覚えておくとよいでしょう。
まとめ
宮中の雑用係として、雛人形の中で唯一庶民の身分である仕丁。
一般的に仕丁を含む雛飾りは大きなものが多いですが、近年はコンパクトな雛飾りが好まれる傾向から、三段飾りや四段飾りにも仕丁が登場しています。
歴史的な背景を知ったうえで表情や持ち物などに注目してみると、また違った視点で雛飾りをお楽しみいただけるかもしれません。
当工房は、江戸時代から続く伝統技術を現代に受け継ぐ人形工房です。
五月人形は、大切なお子様の健やかな成長と幸せを願い、お守りとなる日本の伝統文化です。
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- 投稿日時:2023.4.21 14.15.12 / カテゴリー:コラム
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