雛人形を彩る花飾り『左近の桜・右近の橘』を飾る意味
3月3日はお子さまの健やかな成長を願うひな祭りの日です。
ひな祭りは「桃の節句」とも呼ばれるように、花を飾る習慣があります。
雛人形の両脇には、桜や橘をモチーフにした花飾りが飾られています。
花飾りは雛人形をより華やかに見せるための装飾と思われている方もいるかもしれませんが、実はしっかりとした意味が込められています。
今回は、ひな祭りに飾られる花の種類や意味を解説します。
雛人形に花飾りを添える理由
雛人形は、平安時代における宮中の結婚式を模した飾りのお人形です。
結婚式という華やかな空間を演出するため、雛人形には花飾りが添えられています。
また、花飾りは魔除けや縁起物といった意味合いでも飾られます。
もともと3月3日は「上巳(じょうし)の日」と呼ばれており、縁起が悪いとされる季節の変わり目であることから、「邪気を払うための儀式」として始まったとされています。
そこからひな祭りには魔除けや縁起の良い花木を飾ることが定着していきました。
ひな祭りに飾る花の種類とそれぞれの意味
ひな祭りに飾る花にはそれぞれ意味が込められています。
ここでは、ひな祭りに飾る花に込められた意味を1つ1つ紹介していきます。
桃の花
ひな祭りの別名は「桃の節句」と呼ばれたり、ひな祭りの歌にもあるように桃の花を飾るイメージが強いですよね。
現在桃の花が咲くのは3月下旬頃ですが、昔は桃の花が咲く時期にひな祭りが行われていたことから「桃の節句」と呼ばれるようになりました。
桃には魔除けや厄除けの力があるといわれていて、中国や日本の神話にも神聖な花として登場します。
例えば桃の枝を使って鬼を退治するお話や、桃の実が化け物を追い払うための道具として描かれるお話などがあります。
このように、桃の花はとても縁起のいい花なのです。
桜
ひな祭りに飾る花として欠かせないのが「桜」と「橘」です。
まずはひな祭りに飾る桜の意味を紹介します。
桜には魔除けと邪気払いをしてくれる力があるといわれています。
今では季節のイベントとして親しまれているお花見も、もともとは桜の木を目印に里へ降臨された山の神をもてなす宗教儀式だったといわれています。
お祝いの場で振る舞われる「桜湯」や「桜酒」があるように、桜はとても縁起の良い花なのです。
橘
橘は、柑橘系の樹木で、白い花と小さな実をつけます。
一年中葉が緑色のままで、黄色の実が長く残ることから「不老長寿」を意味する
多くの家紋等のモチーフとして使われたり、橘の花は文化勲章のデザインに採用されるなど日本の歴史と文化に深く結びついた樹木でもあります。
橘と桜の花飾りは、向かって右側に桜を、左側に橘を設置するのが一般的で『左近の桜・右近の橘』と称されることでも有名です。
ここで「飾る位置と呼び方が逆では?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、これには伝統的な雛人形は「京都御所」の内部に位置する紫宸殿(ししんでん)をモチーフに作られていることが関係しています。
紫宸殿の庭には東に桜、西に橘が植えられており、桜の近くに左近衛、橘の近くに右近衛が配陣されていたため『左近の桜・右近の橘』と呼ばれるようになりました。
菜の花
菜の花もひな祭りの時期に飾られる花の一つです。
春らしい暖かな色合いの花で、多くの日本人に親しまれています。
昔は菜の花などからとれる「菜種油」で夜に灯を灯していたことから、「天に召された幼子をしのぶ」という意味もあるようです。
紅白の梅
紅白の梅の花をひな祭りの時期に飾る場合もあります。
紅白の色が見栄えが良い上に、「紅」には魔除けや厄除け、「白」には潔癖や高貴、清廉さが象徴される縁起物です。
ひな祭りの花の飾り方
年に一度のひな祭りですので、お子さまの健やかな成長を願う意味を込めて、華やかに飾りたいですよね。
そこで、ひな祭りで花を飾る方法を紹介します。
花の組み合わせ
花の組み合わせに特に決まりはありませんが、せっかくなので伝統的なひな祭りを参考にしてみるのがおすすめです。
ひな祭りには、桜と橘の花を飾るのが一般的です。
紅白の梅花を組み合わせて代用することもできます。
花飾りを置く場所
花飾りは、雛人形の両端に飾るのが一般的で、親王(男雛と女雛)の両脇、あるいは三人官女の両脇などに設置します。
まとめ
雛人形の花飾りには「桜と橘」や「紅白の梅花」が飾られることが多く、それぞれに魔除けや厄除け、縁起物といった意味があります。
花に込められた意味に注目してみると、毎年の雛人形を飾る作業がより楽しくなるでしょう。
当工房では、江戸時代から続く伝統技術で雛人形を作成しています。
雛人形は、大切なお子様の健やかな成長と幸せを願い、お守りとなる日本の伝統文化です。
お気に入りの雛人形を飾り、お子様の誕生を家族で毎年お祝いしていきましょう。
- 投稿日時:2023.5.18 04.16.00 / カテゴリー:コラム
- https://ajioka.net/blog/colunm/35766